難治性がんの治療

膵臓や小児といった難治性がんで、放射線を強く出す薬剤を使い治療効果を高める研究が相次いでいます。がん患者に投与したホウ素などの薬剤に外から中性子を当て、放射線を出す手法は中性子捕捉療法と呼ばれます。がん細胞が取り込んだ薬剤から放射線が飛び、正常な組織を傷めずにがん細胞をたたきます。従来の放射線や抗がん剤で治せない難治性がんの治療法として期待を集めています。
東京大学の研究グループは、従来のホウ素より約70倍多く中性子を吸収し、強力なガンマ線などを出すガドリニウムの化合物に着目し、微小なカプセルに入れて大腸がんのマウスへ投与して中性子を当てると、何もしない場合に比べ、27日後のがんの大きさを4分の1に抑えたことを報告しています。膵臓がんや肝臓がんなど向けに、5年後の治験開始を目指しています。東京工業大学の研究グループは、ホウ素が従来の10倍強含まれるBSHと呼ぶ薬剤を脂質の微小カプセルに封入しました。中皮腫のマウスへ投与したところ、中皮腫が消えたとしています。中皮腫や肉腫、再発した乳がんなどで5~10年後に治験を始めたいと考えています。

(2018年11月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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