養子制度の改革

 実親のもとで暮らせない子どもを別の家庭で育てる養子縁組、その制度が変わろうとしています。今、検討されている制度改正では、民間の養子縁組あっせん団体を届け出制から許可制とし、縁組の際に実親の意思を丁寧に確認するなどの手続きが必要となります。欧米では養子制度が子の福祉のために活用されてきたのに対し、日本では、いまだに財産の相続や養親の扶養を目的とした家のため親のための養子縁組が中心となっています。そろそろ、わが国でも子どものための養子制度への変革を真剣に議論する時期が来ています。
 特別養子縁組は、不幸な境遇の子どもを他人が引き取って安定した家庭環境で育てるという福祉的な性格を持っています。この制度は、宮城県の産婦人科医が新生児を不妊の夫婦らにあっせんし、虚偽の出生証明書を発行した事件が契機になり、1988年に設けられました。民法では、家庭裁判所の審判で成立する特別養子縁組の対象は、原則6歳未満のみとなっています。実親の同意なしで認めるケースは、極めて悪質な虐待や遺棄などの場合に限られており、その対象はあまりにも狭いと考えられています。深刻な虐待を受けた小中学生も救えるよう対象年齢を、少なくとも15歳未満に引き上げるべきと考えられています。実親が長期間の病気療養や犯罪による服役をしている場合なども、養育が見込めなければ、親の同意なしで縁組できるよう要件を認めるべきと思われます。

 

(2016年4月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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