骨髄移植のドナー確保の困難性

白血病や再生不良性貧血などが対象となる造血幹細胞移植は、骨髄、末梢血、臍帯血の3種類あります。骨髄と末梢血は骨髄バンクを通じて、臍帯血は臍帯血バンクを通じて提供されています。臍帯血は細胞が備蓄されているため早く移植できますが、患者の体内で健康な血液をつくるまでの時間が少し長くかかります。末梢血は生着までの時間は早いのですが、移植後の副作用がきついとされています。骨髄は歴史も実績も豊富ですが、ドナーは全身麻酔が必要となります。
骨髄は年間750件、末梢血は300件、臍帯血は1,300件実施されています。移植後の副作用を抑える方法も研究され、骨髄や末梢血では、白血球の型が半分しか一致していなくても、家族間で提供するハプロ移植が増えてきています。しかし、骨髄バンクのドナー確保は、依然大きな課題です。全国で54万人のドナーが登録されていますが、40歳以上が58%を占めています。若いドナーのほうが治療成績はよいとされています。
骨髄と末梢血では、ドナーは入院と通院で計10日近く仕事や大学を休む必要が出てきます。都合がつかないと断られる例は、年間4,250件ほどあります。同バンクは、企業や大学にドナーのための休暇制度や公欠制度の導入を働きかけています。現在、700以上の企業が休暇制度を導入しています。
移植は1日でも早いほうが良いとされています。2001年度は患者登録から移植までに平均約200日かかっていましたが、事前検査に進んだことがあるドナー候補については、次回以降の検査を省略できるようにするなどの対策もあり、現在は130日ほどになっています。目標は100日以内です。
白血病など血液の病気になる人は年間で1万人以上います。日本骨髄バンクに登録して移植を待つ人は年に約2千人ですが、実際に移植を受けられるのは年1,100人ほどで、200人は移植の前に亡くなっています。ドナー登録者を一人でも多く増やし、1日でも早く患者に移植できるように、制度の整備が望まれています。

(2023年2月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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