高額薬品の値下げ

 医師が処方する公的な医療保険の対象となる薬の価格は、国が決めています。患者は薬代の13割を自己負担します。通常は2年に1回の診療報酬改定で決まり、今春に改定されました。以前から販売されている薬は、2年に1度の薬価改定で価格が下げられます。しかし、近年高額な薬が増え、特例的に値下げできるような制度を考えています。新型のがん治療薬であるオプシーボは、1人年間約3,500万円もかかってしまいます。
 新しい薬は、想定した量が売れれば利益が出るように価格が決められます。しかし、一昨年に販売された時の想定患者は年間470人程度の皮膚がんでしたが、昨年12月に患者が数万人規模の肺がんの治療にも使えるようになって利用者が急増しました。薬代を含む医療費の自己負担には上限があります。70歳以上の外来なら、所得に応じて月8千~44千円ほどで済んでしまいます。薬代が高いほど自己負担の上限を超える分を賄うために、保険料と税金がかかることになります。2013年度の医療費は10年前の1.3倍の40兆円に達し、薬剤費はその2割を占めています。薬代の値下げは、医療保険財政上止むを得ない処置と思われます。

(2016年8月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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