B型肝炎の予防接種の定期化

 わが国では1986年より、B型肝炎キャリアの妊婦から生まれた新生児を対象としたB型肝炎母子感染防止事業が開始され、母子感染の防止に大きな役割を果たしてきました。しかし、ワクチン接種によりすべての者がB型肝炎ウイルスに対する免疫をつけ、感染および関連疾患の発病を回避すべきことは言うまでもなく、実際に海外の多くの国々では公費による定期接種が行われています。201010月より、わが国でもようやくB型肝炎ワクチンの予防接種が定期接種として実施されることになりました。HBVの主な感染経路は、HBVキャリアの母親から出産時などに感染する母子感染(垂直感染)と、水平感染があります。母子感染、水平感染ともに、その感染経源となるのは感染者の血液と体液です。わが国では母子感染防止事業の徹底化により、母子感染は激減しました。水平感染は、主に感染者と濃厚接触、針刺し事故、注射器・注射針の使いまわし、輸血・臓器移植などに起因します。
 標準的な接種期間は生後2か月から9か月未満までとなっており、生後2か月から接種を開始すれば、生後2か月、3か月、7~8か月に各1回、合計3回接種で終了することになります。B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンのため、接種後に異なるワクチンを接種する場合には6日以上の間隔をあける必要があります。日本で承認されているHBVワクチンは、頻度は高くありませんが、接種後、普段より機嫌が悪くなったり、軽い発熱や注射部位の腫れなどがみられることがあります。また、極めてまれではありますが、急激なアレルギー反応や急性散在性脳脊髄炎が起こる場合があります。

月刊母子保健第690号
(吉村 やすのり)

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