iPS細胞から卵子の作製

 九州大学の林克彦教授らは、マウスiPS細胞を体外で卵子にまで育てることに成功しました。卵子を受精させ健康な子どもも得ています。従来は作製過程でマウスの卵巣に移植する必要がありました。
 まずマウスの尾の細胞から作ったiPS細胞で、精子や卵子のもととなる始原生殖細胞を作ります。次に体内で卵子になるまでの約5週間の過程を3段階に分け、それぞれ培養しました。この結果、1回の実験で6001,000個の卵子を作れるようになりました。この卵子を通常の精子と受精させ、計1,348個の受精卵から、子宮に移植してマウス8匹を誕生させています。生まれたマウスは正常に育ち、子どもを得る能力があることも確認されています。
 従来よりマウスiPS細胞から始原生殖細胞を作ることはできましたが、受精可能な卵子に育てるためには、別のマウスの卵巣に移植する必要がありました。今回は卵子を作るまでの全ての過程が体外で操作されており、この方法によりヒトにおいてもiPS細胞から卵子を作ることができれば、卵子のない女性への臨床応用が可能になるかもしれません。

(2016年10月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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