iPS細胞による拡張型心筋症の治療

慶應義塾大学の研究グループは、iPS細胞から作った心筋の細胞を使い、重症心不全の治療を試みる臨床研究を始めます。iPS細胞を使った心臓病の臨床応用は、大阪大学に次いで国内で2件目となります。拡張型心筋症という重い心臓病の患者が対象です。心臓の壁が薄くなり血液を押し出す力が弱まる病気で、国内に2万5千人の患者がいます。根本的な治療は移植しかありません。しかし、国内では65歳未満しか移植は受けられません。
京都大学iPS細胞研究所が健康な人の細胞から作ったiPS細胞を、心筋の細胞に分化させます。患者の心筋内に移植します。対象となる患者は3人です。心筋の内部に移植した細胞は、血中の免疫細胞に触れる機会が少なく、拒絶反応が起こりにくいとみられています。さらに、移植する細胞と患者の免疫の型であるHLAを一致させて免疫反応を抑えることにより、長期にわたって治療効果が期待できます。1年間かけて経過を観察し、移植した細胞や移植方法の安全性を確かめます。

(2020年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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