iPS細胞を使った創薬研究にて世界初の有効性

慶應義塾大学の研究チームが、iPS細胞を使った創薬研究の治験で世界初の有効性を示す成果を発表しています。難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人にパーキンソン病の薬を使うと、病気の進行を約7カ月遅らせる可能性があるとする治験の結果を発表しています。iPS細胞を使って発見した薬で、実際の患者で効果を確認しています。患者のiPS細胞を薬の研究開発に生かすiPS創薬で見つけた薬が、治験で有効と確認できたのは世界で初めてです。
この薬は、パーキンソン病の薬ロピニロール塩酸塩です。チームは、ALSの人のiPS細胞からつくった神経の細胞で、病気の状態を再現させることに成功しました。さまざまな病気に使われる約1,230種類の薬で効果を試し、この薬がALSに有効な可能性があるとして、2018年に治験を始めました。
治験には発症して5年以内で、多少の介助があれば日常生活が可能な43~79歳の20人が参加しました。最初の半年間は13人が薬を、7人が偽薬をのみ、その後の半年間は、治験を継続できた17人全員が薬をのんでいます。その結果、薬を1年間続けてのんだ人では、一人で歩けなかったり、物ののみ込みが難しくなったりするなどの状態になるまでの日数の中央値は約50週と、偽薬から始めた人より195日長くなっています。副作用などの理由で途中で薬をやめた人はいませんでした。

(2021年5月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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