siRNAによる原因遺伝子の抑制

siRNAとは、21~23塩基対からなる低分子二本鎖RNAです。siRNAはmRNAの破壊により遺伝子の発現を抑制します。siRNA医薬と呼ばれる分野が、創薬で注目を集めています。病気の原因遺伝子の働きを抑えて治療する薬で、遺伝性の病気だけでなく、糖尿病やがんなどの治療を目指す動きも進んでいます。
病気の原因遺伝子からできるmRNAに合わせて設計したsiRNAを薬として投与すると、mRNAに結合して病気を引き起こすたんぱく質の生成を抑えます。特定の遺伝子の異常で起こる病気の治療に適しています。
RNA干渉の現象は1998年に報告され、2000年代にも複数の治験が実施されましたが、治療効果が出なかったり、強い副作用が出たりして実用化が進みませんでした。2010年代に、siRNAを体内の狙った患部に届ける技術が進歩して道が開けました。けん引するのは米バイオ医薬のアルナライム・ファーマシューティカルスです。2018年に遺伝性の病気の治療薬で世界で初めて実用化しました。
非アルコール性脂肪肝炎や糖尿病などでもsiRNA医薬の新薬が開発されています。がんへの応用を目指す動きも進んでいます。東京大学や慶應義塾大学などは、難治性の乳がんと膵臓がんの新薬候補を開発しています。

(2022年4月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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