がんの放射線新手法の実用化

がんの放射線療法の新手法で、診断と治療を一体化したセラノスティクスの実用化が広がっています。欧米では2022年に患者の多い前立腺がんで新薬が承認されています。病巣を発見しながらピンポイントで攻撃し、副作用を抑えます。世界市場は2025年に5割増の1,300億ドル(約17兆円)になる見通しです。
この新手法はセラノスティクスと呼ばれ、がん細胞にくっつく診断用の放射性医薬品と、同じ構造の治療用の放射性医薬品を患者に投与します。病巣の場所や状態を可視化して、ピンポイントで攻撃し、副作用を抑え、薬の効果を見極めやすいのが特徴です。従来の体外からの放射線治療は病巣が局所に限る場合が対象ですが、セラノスティクスは転移したがんに用いることができます。
セラノスティクスは病変が見つかりやすく、治療方針が立てやすくなります。しかし、日本は欧米に比べ、セラノスティクスの技術開発や普及が遅くなっています。背景にはわが国の複雑な規制があります。治療しやすい環境づくりが必要です。また、日本は放射性医薬品の原料の大半を海外に依存しています。医薬品の有効期限は短く、原料調達から製造、販売までの供給網全体の構築も課題となってしまいます。

 

(2023年1月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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