深刻化する教員不足

教員不足や不登校の急増などで、学校崩壊の危機が迫っています。日本経済新聞や文部科学省の調査によれば、公立小中高校と特別支援学校の2,092校(全体の約6%)で、計2,778人の欠員が生じています。不足人数は1,591校・計2,065人で、ともに1年で3割増えています。人数は全教員の1%未満と僅かでも、影響を受ける子は万人単位に上るとみられています。優秀な教員が足りず、学校が回らない学校崩壊につながる恐れが出ています。

背景には、教職の魅力低下による志願者の深刻な減少があります。2021年度実施の小学校の採用試験受験者は約4万人と、10年前より3割減です。採用倍率は4.4倍から過去最低の2.5倍に低下しています。受験に必要な教員免許状は、大学で単位を集めれば取れ、適性や能力は厳しく問われません。力不足の志願者も多く、倍率に比例して教員の質も下がっています。

わが国の教員不足には、日本の教員は海外と比べて労働時間が長いことが関係しています。2018年のOECDの調査によれば、1週間当たりの仕事時間は、小学校54.4時間、中学校56.0時間で、それぞれ参加国・地域で最も長くなっています。他国と比べて事務的な業務の多さ、保護者への対処にストレスを感じる教員が多くなっています。授業の改善やICTの活用も遅れています。ICTを活用させる中学教員の比率は17.9%で、平均の51.3%を大きく下回っています。

2000年以降、小中高校の教育の採用試験の倍率は急激に低下しています。もはや小手先の改革では質の高い教員は確保できません。子どもの多様な才能を丁寧に育てる環境が公立学校にないと、イノベーションも生まれません。ブラック職場のレッテルをはがすには、授業を中心に子どもの能力を伸ばすことへの役割の絞り込みと、働き方や待遇の見直しが欠かせません。

(2023年1月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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