わが国の不妊治療の現況

不妊治療は、菅義偉前首相の主導で、2022年4月から保険適用が拡大しました。適用の対象は、人工授精や体外受精、顕微授精などです。以前は各医療機関が自由に価格を決めていましたが、4月以降は全国一律の価格になり、患者は窓口で3割支払えばすむようになりました。保険適用拡大とともに助成金事業は終了し、1カ月の自己負担に上限を設ける高額療養費制度が使えるようになりました。
日本の不妊治療の患者は世界的に見て高齢で、2019年では40歳以上だけでも全体の4割を占めています。米国と英国で40歳以上の患者は2割にとどまっています。今回の不妊治療の保険適用により、患者の年齢が若くなってきています。JISARTの調査によれば、患者の平均年齢は保険適用拡大を境に38.5歳から37.8歳になっています。これまで費用が壁となっていた若年層らへの治療拡大につながっています。
わが国は、諸外国に比べ不妊治療、特に体外受精などの生殖医療の治療周期数が、欧米諸国に比べ非常に多くなっています。これには、高齢者が多いことが関与しています。わが国では高齢女性に対し、通常の卵巣刺激を行わないで採卵することが多く、治療の周期数だけが増えることになってしまいます。また米国などでは、高齢女性には提供卵子による体外受精が実施されるケースが多くなっています。

(2023年1月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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