わが国の予防接種のスケジュール

国内における予防接種には、定期接種と任意接種のワクチンがあります。任意接種のワクチンは、予防接種法に規定されていないため、費用の自己負担があり、救済制度も異なりますが、これらの任意接種のワクチンも定期接種のワクチン同様に重要であり、積極的に接種を推奨すべきです。
近年、わが国においても数多くの予防接種が可能となり、とくに乳幼児期において、複数のワクチンを限られた期間中に接種する必要があります。また日本では混合ワクチンがまだ諸外国と比較して少なく、複数の異なるワクチンを同時に接種するいわゆる同時接種が大切となります。同時接種は海外では以前から広く標準的に行われていた医療行為ですが、日本国内では、接種可能なワクチンが比較的少なかったこともあり、その概念がまだ十分に浸透していません。
同時接種によって、それぞれのワクチンの有効性に影響が出ることはなく、副反応の頻度が上がることもなく、原則として接種できるワクチンの本数に制限もありません。同時接種の大きな利点として、接種時期を逃さない、各ワクチンの接種率の向上、保護者の時間的・経済的負担の軽減、医療従事者の時間軽減があげられます。
以前から生後2か月で接種開始するワクチンにインフルエンザ桿菌(ヒブ)、小児肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスがありましたが、これらに加えてジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオを含む四種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・破傷風・百日咳を含む三種混合ワクチン(DPT)、不活化ポリオ(IPV)の接種開始時期も生後2か月に引き下げられています。
また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンとしては2価と4価がありましたが、これ加えて9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード®9)が接種可能となりました。予防接種法では定期接種として12歳から16歳(小学6年生から高校1年生相当)の女子が対象です。2価・4価ワクチンで接種を開始した場合は、原則として同じワクチンで3回接種を行いますが、9価ワクチンで残りの回数を終了することも可能です。9価ワクチンに関しては、15歳未満に初回接種を行った場合は、2回の接種で完了となります。なお4価ワクチンは、任意接種(自費負担)扱いですが、9歳以上の男子も接種が可能です。

(2023年5月1日 月刊母子保健)
(吉村 やすのり)

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