わが国の双胎の割合

厚生労働省の統計によれば、全出生数に占める双子の割合は、1950~1970年代までは1.0~1.1%でした。それが1980年代以降、徐々に高まり、2000年代に入ると、2%台にまで上昇し、2005年にピークの2.2%に達しています。
その理由は不妊治療です。1つは1970年前後から使われ始めた排卵誘発剤で、複数の卵子が出ることが増えたためです。もう1つは1980年代後半から増えた体外受精の影響です。体外受精は、体の外で卵子と精子を受精させて受精卵を作り、女性の体内に戻します。2つの受精卵を同時に女性の体内に入れると、2つとも育って、二卵性の双子になることがあります。
体外受精で妊娠率を高めるため同時に複数の受精卵を戻すことで、二卵性の双子が増えました。しかし、双子の妊娠・出産は母子ともにリスクが高いため、2008年、日本産科婦人科学会が、戻すのは原則1つという見解を発表しました。それと前後し、不妊治療クリニックでの自主規制も働いたとみられ、双子の出生率はピークアウトしました。35歳以上でなかなか妊娠しない人などは許容されるため、晩産化や不妊治療の普及でなお高止まりしています。
米国では受精卵を複数戻すことが多く、双子や三つ子などの多胎率は日本のほぼ2倍です。日本は海外の先進国と比べれば、最も多胎が少ない国となっています。一卵性の双子の発生率は世界中でほぼ一定ですが、二卵性は人種により異なります。日本でも都道府県別にみると随分違いがあります。分娩数での比較ですが、2020年の全国平均は1,000分娩に対し10.3分娩が双子です。最も高い新潟県は13.8分娩、最も低い福島県では7.4分娩が双子です。その差は2倍程度の頻度ですが、理由は不明です。

(2022年9月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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