結核の低蔓延国入り

9月24日から結核予防週間です。2021年の日本の10万人あたりの結核患者が9.2人となり、ついに10人を切って低蔓延国の基準を満たしました。しかし、今でも年間1万人以上の患者が新たに報告されており、決して昔の病気ではありません。結核は1950年までの死因1位で、国民病、亡国病などと呼ばれ、多くの人の命を奪いました。
2021年に新たに患者と診断されたのは、1万1,519人で、70歳以上が患者の63%を占めています。広く結核が流行していた時代に感染し、高齢になって免疫力が下がってきたために発病する人が多くなっています。結核で亡くなる高齢者は今も多く、2020年には90歳以上の患者の54%、80代の患者の38%は亡くなっています。
痰のからむ咳や微熱、だるさが2週間以上続いたら結核を疑います。結核菌は、空気感染で広がるため、完全に予防することは難しく、20~30代の患者では、約30%が定期健診の胸部X線撮影などで見つかっています。結核の発症を抑えるBCGワクチンは、生後5~8カ月の間に接種することが標準的ですが、効果は15年ほどしかありません。
発病したら、他人に感染させる可能性がある期間は入院し、基本的には、抗結核薬を半年間服用します。大切なのは、薬の治療を最後まで確実に受けることです。日本ではまだ患者の1%未満ですが、世界的には薬剤耐性結核が問題となっています。薬を完全にのみきらなかった場合、薬が効かない結核菌が現れる可能性があります。結核は免疫力が落ちてきた時に発病します。発病を防ぐためには適度な運動や十分な睡眠、バランスの良い食事が大切となります。

(2022年9月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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