世界の高度人材の争奪戦

優秀な若者や高い専門知識・技術の持ち主、成長分野を切り開く起業家など、いわゆる高度人材の奪い合いが国家間で激化しています。優れた才能を意味するタレントの争奪戦です。それは国力を左右する戦いでもあります。
英国は、有名大学の卒業生に対する異例の ビザ優遇策を発表 しています。技術革新や起業の国際拠点づくりが狙いで、現地企業との雇用契約がなくても就労ビザを出します。2021年の卒業生の場合は、37大学が優遇を受けています。日本からは、東大と京大が入っています。

高評価の大学には、当然優秀な若者が集まります。米国への留学生数は世界1位ですが、トップクラスの学生も他国よりずっと多くなっています。

米国は、究極のタレントと言えるノーベル賞学者も次々と呼び込んできました。1901年から現在までの自然科学3賞( 物理学 、 化学 、 生理学・医学 )の全受賞者631人の動きをみると、気づくのは米国の突出ぶりです。他国で生まれ、米国で受賞した頭脳流入の多さです。その数は全体の3分の1の104.5人に及んでいます。一方、米国から他国に出て受賞した頭脳流出は3人だけです。

日本は世界のタレントに選ばれる国にはなっていません。OECDは、2019年に各国の魅力度を比べた人材誘致指数を発表していますが、日本は25位です。スイスのビジネススクールIMDが2021年に公表した世界人材ランキングでは、39位でした。日本の弱点は、社会の閉鎖性、経営幹部の能力や国際経験の不足、言葉の壁などです。留学に出る若者の数は減っています。米国での博士号取得者も中国やインドに大きく引き離されています。

(2022年9月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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