わが国の少子化対策への懸念

国が本腰を入れ始めた少子化対策に、浪費の懸念が出始めています。現場となる自治体で保育所整備などに費やされた全国の予算は、20年前の3倍超になっていますが、効果は限定的で効果検証が十分になされていません。
市町村が支出した児童福祉費は、2021年度に10.7兆円に達しています。0~19歳の20年前との比較では全体で3.2倍に増え、若年世代1人あたりでは4倍近くになっています。今春の統一地方選でも子育て支援強化の訴えが目立ち、国が異次元の少子化対策を掲げるなど、拡大路線は今後も続く公算が多くなっています。
自治体を対象にした内閣府の2021年度の調査では、少子化対策の効果に子育てしやすいと思う住民の割合上昇や、出生数の増加を見込むとの回答はそれぞれ6割ありましたが、実際の効果は、住民の割合上昇が25%、出生数の増加はわずか5%です。
出産・育児のほか、出会いや家庭の経済力も絡む少子化の要因は複雑であり、事業の効果測定や改善は容易ではありません。福井県は、2020年度から大学と連携して人口減少を分析しています。女性の婚姻年齢を1歳下げると希望出生数が0.14人増えるという結果から、早めに結婚した夫婦への支援金を新設するなどの取り組みを進めています。多様な意見を反映できるように、女性や子育て中の人が政治参加しやすい環境整備も求められます。

(2023年5月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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