わが国の税や社会保険料の負担率

企業に雇用され子どもがいる世帯と子どもがいない世帯の収入と、それに対する税や社会保険料の合計から手当を差し引いた負担率の国際比較をしたところ、先進国平均と比べて、日本は子どもがいる世帯への支援が薄いことが分かります。また、生活保護受給世帯の所得より少し上の低所得層の子育て世帯の負担率が、他の所得層と比べて相対的に高くなっています。
この傾向は妻が専業主婦などの片働き世帯でも、共働き世帯でも同様です。平均年収以下の世帯では、諸外国よりも負担率が高い点は大きな課題です。負担率を分解すると、先進国平均では税の割合が高いのに対し、日本は社会保険料が高いのが特徴です。日本は世界で最も高齢化が進んでいることもあって、社会保障の給付が増える傾向にあり、その分社会保険料の負担が高くなっています。
社会保険料については、所得だけで見るのではなく金融資産も含めて、経済的に支払い能力がある人に多く納めてもらう応能負担を考える必要があります。米国など海外では、低所得者を支援する仕組みとして、現金給付と減税を組み合わせた給付付き税額控除があります。
民間人で作る人口戦略会議は、今年1月に人口減少を食い止めるための提言を発表しています。提言では、定常化戦略(人口安定化)と強靭化戦略(成長力確保)を両方進めることが大切だとしています。少子化の加速を防ぎながら、人口が減っていく中で生産性を上げていく必要があります。国民全体で健全な危機感を共有し、定常化と強靭化の両面作戦を展開できるかが問われています。

(2024年3月13日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。