わが国の臓器移植の現状

日本臓器移植ネットワーク(JOT)によれば、移植を希望している人は約1万6千人です。これに対し、国内で脳死や心停止となり、臓器を提供する人は1年間で約100人にとどまっており、摘出した臓器が患者に移植されるのは年400~500件とされています。希望者の約2~3%しか移植を受けられないのが現状で、移植を待ちながら亡くなる患者も多くなっています。
移植を受けるために何年も待つことは珍しくなく、平均で、心臓で約3年、肺で約2年半、腎臓では約15年の待機期間を要します。腎臓や肝臓は、生体移植を受けることもできます。ただ、ドナーになれるのは、原則、親族に限られます。健康な人の体にメスを入れるという倫理的な問題や、手術に伴うドナーのリスクもあり、あくまで例外的な医療という位置づけです。
世界的に見ても、日本の脳死や心停止後の臓器提供数は極めて少ない状況です。人口100万人あたりの提供数は、米国の36.88、英国の24.88に対し、日本は0.99と大きな開きがあります。わが国で、臓器提供に関する意思表示をしている人は1割ほどしかいません。また、医療機関側の体制の問題もあり、脳死提供ができるとされる大学病院や救命救急センターのうち、実際に体制が整っているのは半数に満たない状況です。
このため、国内での臓器提供者を増やすための取り組みが進められています。当初の臓器移植法は、脳死下の臓器提供は書面で本人の提供意思が確認できることが条件でしたが、2010年の改正法施行で意思が分からない場合でも家族が承諾すればできるようになっています。脳死の臓器提供者数は増えましたが、依然、世界水準とは大きな開きがあります。

 

(2023年2月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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