アトピー積極治療による食物アレルギー減少

国立成育医療研究センターの報告によれば、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんに、ステロイドの塗り薬を使って通常より積極的な治療をすると、卵アレルギーを発症する割合が減少することが分かりました。食物アレルギーは、バリアー機能が低下した皮膚に、食べ物に含まれる原因物質(アレルゲン)が触れることで発症するとの説が主流になっています。このメカニズムを裏付ける結果となっています。
アトピー性皮膚炎と診断された生後7~13週の赤ちゃんを対象に実施しています。湿疹がある部分だけにステロイド薬を塗る通常の治療をするグループ322人と、湿疹がない部分も含め、全身にステロイドを塗る積極的な治療をするグループ318人に無作為に分け、食物アレルギーの中で最も多い鶏卵アレルギーの有無を生後28週の時点で検査しています。通常の治療をしたグループでは、鶏卵アレルギーを発症した赤ちゃんが41.9%だったのに対し、積極的な治療をしたグループでは31.4%でした。
食物アレルギーは、皮膚の荒れた部分にアレルゲンが触れ、体内に入ることで発症します。しかし、発症前の早いうちからアレルゲンを含む食べ物を食べると、免疫反応が起こらず、アレルギーを抑えるという仮説が近年の研究で有力視されています。
食物アレルギーを発症する子どもの多くは、アトピー性皮膚炎を併発しています。家庭などで調理した食べ物のアレルゲンが部屋の中に細かく散り、皮膚炎で荒れた肌に触れることで、食物アレルギーを発症していると考えられます。全身に積極的な治療をすることにより、肌のバリアー機能が回復し、食物アレルギーを発症する割合が低くなったと考えられます。

(2023年5月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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