アルツハイマー治療薬の最前線

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が死滅する病気です。発症の10~20年以上前から脳にアミロイドβがたまるほか、神経細胞内でタウという別のたんぱく質が蓄積されることが明らかになっていています。アミロイドβがアルツハイマー病を引き起こす最初のきっかけになるというアミロイド仮説は、広く知られています。しかし、これまでこの仮説に基づく薬の多くは、治験で症状の進行を抑える効果を示すことはできませんでした。
病気の原因とされる物質を脳内から除去する新たな治療薬レカネマブが、1月に米国で迅速承認を受け、日本でも承認に向けた審査が進められています。レカネマブは発症早期の患者を対象とした治験で、アミロイドβを減らした上、症状悪化のスピードを27%遅くする効果を示しました。エーザイは、早期に治療を開始すれば、症状の進行を平均3年遅らせられると説明しています。しかし、効果や副作用に課題を指摘する声もあり、さらなる効果を目指した薬の開発研究が進められています。
異常なタウの除去が大切だとの指摘もあります。タウは、神経細胞の構造を支えていますが、アルツハイマー病を含む様々な認知症患者の脳では、異常な形でたまっています。タウを除去する薬剤の開発も進められています。アミロイドβやタウなど、複数の標的に対する薬を組み合わせて使うことが、今後の方向性になると思われます。

(2023年4月2日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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