出産費用の保険適用について憶う

岸田総理は、子どもを産みやすい環境を整えるため、出産費用を将来的に公的医療保険の適用対象とする考えを表明しました。出産費用は、正常分娩の場合、病気やけがに当たらないため、現在は保険が適用されていない一方、原則42万円の出産育児一時金を支給する仕組みがあります。4月からは50万円に引き上げられますが、医療機関の便乗値上げも懸念されているほか、地域や医療機関によって費用に差があることが問題視されています。出産費用の見える化を進め、医療機関のサービスと費用の検証を行った上で、保険適用を検討していきたいとしています。
出産費用は右肩上がりで上昇しています。厚生労働省によれば、2012年度は全施設平均約41万7,000円でしたが、2022年度は約48万円と大幅に増えています。都市部においては、ほとんどの医療機関で60万円を超えています。

出産費用は医療機関が自由に決めているため、公的医療保険の対象とすれば全国一律の公定価格となるため、費用の上昇を抑制することが期待できると考えられます。物価や所得と連動して都市部の出産費用は高額になりがちですが、地域格差も解消されるとしています。
4月より出産育児一時金が50万円に引き上げられるため、都市部を除く地方においては、50万円以内で分娩費を賄うことができることが多く、窓口にて支払いせず、退院できるケースが多くなります。保険適用になれば、例えば分娩費が50万円に設定されたなら、3割負担で15万円の支払いが必要となります。60万円に設定されれば18万円の支払いが生じ、保険適用前より負担が増えることになってしまいます。そのため、分娩に関わる経済的負担を取るためには、出産費用に保険適用をした上で、原則3割の自己負担分に公費を充てて実質無償化することも考慮に入れなければならなくなります。
日本は海外とは異なり、半数以上の分娩は総合病院ではなく、産科医院で行われています。地域事情に応じて費用を決める仕組みが崩れると、多くの産科医院は経営が成り立たなくなるとの意見も聞かれます。また、妊婦自身の自由な選択により、様々なサービスが利用できる幅を狭めてはならず、慎重な議論が必要となります。

(2023年3月30日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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