コロナ病床確保の矛盾

国は2020年度にコロナ患者のために病床を空けた場合に病床確保料を出す制度を設けました。設備・人員配置の都合で休止する病床も対象になります。病床の種類に応じ、1床につき1日最大7万4千円~43万6千円を、国が全額負担し、2020~2021年度で3兆円を交付しています。
新型コロナウイルス患者用の病床に支払うこの国の補助金が、実績の伴わない病院にもつぎ込まれています。日本経済新聞の調べによれば、感染ピーク時の病床使用率が都道府県平均を大きく下回った404病院に、2年間で3,660億円超を交付していました。6割超は国公立・大学病院です。資金負担のない自治体が病床上積みを強く求めた結果、見せかけの専用病床が大量発生するとともに病院が潤う矛盾が生じています。

総務省がまとめた地方公営企業等決算によれば、全国の公立病院の経常損益は、2019年度に計980億円の赤字でしたが、2020年度に1,251億円の黒字に転換しています。2021年度も3,256億円の黒字でした。国立病院機構は、黒字額が2019年度の23億円から2020年度は576億円となり、2021年度には907億円に膨らんでいます。

 

この病床確保料は、新型コロナウイルス患者を受け入れるため病床を空けた場合に支払われる補助金です。都道府県の病床確保を後押しした側面がある一方、補助金を受け取りながら患者を受け入れない幽霊病床が再三指摘されてきました。そこで国は、2022年1月から直近3カ月の病床使用率が都道府県平均の70%を下回った病院の補助額を減額する運用を始めました。請求できる休止病床数についても上限を設けました。10月からは、半年の病床使用率が50%を下回る病院の補助金に上限額を設ける措置もとられています。
医療資源が分散している日本では、病床だけを増やしても限界があるのに、自治体は補助金を負担しないため、費用対効果を吟味せずに上積みを求める形となっています。次の感染症に備えて、国や自治体は病床データを開示すべきです。通常医療とコロナ医療を両立した病院のデータを集め、効率的な患者受け入れ体制を構築しなければなりません。

(2022年12月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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