コロナ禍での超過死亡の抑制

一般に死亡者数は、呼吸器感染症や脳卒中などの患者が増える1月に最多の14万人程度となり、気候の温暖な5~6月にかけて少なくなります。日本は、欧米各国に比べ、コロナ禍での総死亡数が平年よりどの程度多いかを示す超過死亡を抑えています。WHOの分析によれば、全世界で2020~2021年に超過死亡が約1,500万人に達しています。
一方、日本では、平年よりも死亡が少なく、特に2020年は死亡が少なく、マスク着用や外出自粛といったコロナ対策で、他の感染症や病気による死亡が減った影響とみられています。しかし、2022年の死亡者数は最初の2年間に比べて多くなっています。2020~2023年春まででは、日本も超過死亡が数万人規模になる可能性があると予測されています。それでも、2年間で100万人近い超過死亡がとなった米国などより、水準は低くなっています。
この超過死亡の少なさは、誰でも受けられる地域医療の質の高さが寄与していると思われます。WHOの分析によれば、新型コロナの流行前に60歳の平均余命が長かった国ほど、超過死亡が少なかったとされています。日本は60歳の平均余命が世界最長であり、平時からの医療アクセスの良さや、高齢者を対象とした各種ワクチン接種の体制充実が背景にあると思われます。危機管理に必要な平時の備えは、一定程度あったとも言えます。
超過死亡は、全ての死因を含む実際の総死亡数から、近年の死亡者数のトレンドに基づく推定死亡者数を差し引いた人数です。医師の届け出では把握できなかったコロナによる死亡者のほか、救急搬送や通常医療の逼迫により助からなかった命も含まれます。日本は高齢化の影響でそもそも死亡者が増え続いています。しかし、2020年のコロナ流行後は増加の傾きがやや急になっているように見え、超過死亡が生じている可能性があります。

(2023年1月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。