コロナ禍における病院の黒字

国は、コロナ患者の受け入れを促すため、病床確保料などを医療機関に支払っています。会計検査院によれば、2020~2021年度で3,483医療機関に計3兆3,848億円が交付されています。1病院あたりの医業収支の平均額は、補助金を除くと2020年度は8億円の赤字、2021年度は7億円の赤字と、2019年度の4億円の赤字より赤字幅が拡大しています。しかし、補助金を含めると2020年度は3億円の黒字、2021年度は7億円の黒字になっています。
病床確保料は、病床を空けることで生じる収入減を補填する狙いでしたが、実際は減収分を上回る補助金が支払われています。コロナ対応に病床を割いて補助金を受け取った病院ほど、業績の改善度合いが大きい傾向がみられます。通常の補助金はかかった費用に対して実費を支払うのですが、病床確保料はコロナ患者のために病床を空けただけで支払われます。人員配置などの都合で休止した病床分も補填する手厚さです。
補助金が患者受け入れをためらう病院の背中を押しました。国内で確保できる病床数は、2020年5月の1万6,081床から2022年3月には4万3,671床と2.7倍に増えました。一方で補助金を受け取りながら故意に患者を受け入れない幽霊病床の存在が指摘されるなど、巨額の国費で政策誘導したひずみも生じています。
日本は、人口あたり病床数が世界首位なのに医療逼迫を繰り返しています。役割分担せず病院が乱立し、医療人材や設備が分散しています。非効率な地域医療体制を改善するには、病床の再編が必須です。会計検査院は、補助金交付要件で患者の受け入れ態勢が整っていることを明確にし、実態に合わせて金額を設定するよう厚生労働省に要請しています。

 

(2023年1月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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