スタートアップの雇用の増加

スタートアップが雇用を積極的に増やしています。日本経済新聞社の調査によれば、合計約1万8,000人と2年間で一気に5割超増えています。人手不足の解決や業務の効率化に伴うデジタル化の需要が追い風となっています。大手企業からの転職者も増え、雇用の受け皿としての役割が強まっています。
有力スタートアップが雇用を増やせる最大の要因は資金力の向上です。2022年以降の世界的な金利の上昇を受けて、資金調達には逆風が吹いてはいますが、技術力やサービスに優れる有力企業は一定の規模の調達ができています。フォースタートアップスが運営するデータベースによれば、2023年に10億円以上を調達した国内のスタートアップは190社と、2019年と比べて3割増えています。

活躍の場を求め、大手企業からスタートアップに転職する人も増えています。エン・ジャパンの調査によれば、34歳以下の転職者のうち、大手からスタートアップに転じた人の割合は2023年に約26%と、2019年比で14ポイント上昇しています。研究者や技術者など専門性を持つ高度人材の採用意欲も高くなっています。スタートアップの年収1,000万円以上の求人比率は17%と、大企業の13%を上回っています。スタートアップが雇用の受け皿として存在感を高めれば、産業の新陳代謝や成長市場への人材の流動化が期待できます。日本的な雇用慣行が変わるきっかけにもなります。
しかし、スタートアップの経営は、大手に比べて不安定な面もあります。資金調達環境を考慮して採用をスローダウンする社もあります。足元では大手企業が大幅な賃上げに動くなど、人材獲得競争も激しくなっています。魅力ある働き先として選ばれるには、明確な成長プランや福利厚生の充実など、総合的な企業価値を高める努力が欠かせません。

(2024年4月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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