チャイルドペナルティーを防ぐには

男女の賃金格差が問題になっているなか、その元凶としてチャイルドペナルティーが世界的に注目されています。チャイルドペナルティーとは、子どもを持つことに伴う労働所得の減少を言います。出産前後で収入が下落する先進国共通の現象で、特に日本はその傾向が著しくなっています。チャイルドペナルティーは、女性が潜在能力を十分に発揮できていない証しでもあります。

チャイルドペナルティー問題は、米プリンストン大学のヘンリック・クレベン教授らが2019年に提起しました。男女の賃金格差は、日本に限らず先進国共通の問題で、ジェンダー平等施策が進む国では、徐々に差は縮まってきています。しかし、世界の経済学者は根強く残る関門としてチャイルドペナルティーに着目しています。日本では、出産1年前の収入を基準とし、出産1年後は67.8%も減ります。出産退職して収入がゼロになる人も含むので、減少幅は大きめに出ています。しかし日本は他国に比べ落ち込みが大きく、その後の回復も緩やかです。
チャイルドペナルティーの解消に向けて、先進国は先手を打っています。昇進規定を見直したり、女性の管理職比率を高めるための人事制度を設ける企業も増えています。多様な人材が活躍する環境は、組織活性化とイノベーション創発に不可欠です。キャリアの早回しを含む女性活躍推進は女性のためでなく、経営戦略として実施するべきです。

(2022年9月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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