体感物価の上昇

ウクライナ危機によるエネルギー不安が襲う欧州は、低所得層の体感インフレ率が高所得層の1.5倍に達しています。光熱費の高騰は余裕のない家計ほど響きます。
家計の体感は、統計上の数字より厳しくなっています。過去1年に物価がどれだけ上がったかを消費者に直接答えてもらう欧州委員会の調査によれば、ユーロ圏の低所得層の平均値は4~6月期に21.5%と、高所得層の14.6%の1.5倍に達しています。各国は家計への現金給付など物価高の手当てに躍起になっています。
難しいのは、家計支援などの財政支出は物価高を長引かせるリスクがあります。通常、価格が高騰すれば需要が減る市場メカニズムが働きます。しかし補助金などは需要を支え、インフレ圧力を温存してしまいます。インフレ退治の常道として米欧が急ぐ利上げも、景気後退のリスクが避けられません。金融市場を通じて、新興国や途上国の混乱を深める懸念もあります。今回の世界のインフレも低所得層の生活を困窮させ、政治の迷走を招く恐れは否定できません。

(2022年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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