電子処方箋の運用開始

患者が医療機関で受け取る処方箋をデジタル化する電子処方箋の運用が、2023年1月から始まります。医療機関や薬局が患者の処方歴を把握して、不適切な飲み合わせなどを未然に防げるメリットがあり、海外では普及が進んでいます。導入には、マイナンバーカードを保険証として使うためのシステムを医療機関が用意する必要があります。
電子処方箋は、医師が処方する紙の処方箋をデジタル化するだけではありません。患者が同意すれば、過去の処方歴などを医療機関や薬局が共有できるようになります。飲み合わせの確認に役立つほか、重複処方などの無駄をなくし、医療費を抑えられる可能性があります。患者にとっては、オンライン診療とオンライン服薬指導、薬配送サービスを組み合わせれば、外出せずに薬の受け取りまでネットで完結することも可能になります。
導入にはいくつかの条件があります。一つは医師や薬剤師の資格を電子証明する専用カードの取得です。医師用の資格証明の保有割合は、5月末時点で全国で約1割と低水準です。もう一つの条件は、マイナ保険証用のオンライン資格確認と呼ぶシステムを使える機器の設置です。このシステム上で医師が電子処方箋のデータを登録し、薬剤師が内容を確認します。対応済みの医療機関は3割弱にとどまっています。
電子処方箋の実用化は海外が先行しています。OECDによれば、フィンランド、スウェーデン、エストニアなどでは、電子処方箋の普及率がほぼ100%です。重複処方の減少による医療費の抑制などにつながっています。日本で普及を進めるためには、健保組合などの保険者が加入者に電子処方箋を勧めるインセンティブをつけることも必要になります。

 

(2022年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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