ノーベル賞の受賞まで

ノーベル賞の授賞式は、毎年12月10日にスウェーデンのストックホルムで開かれます。この日はノーベル賞の生みの親であるアルフレッド・ノーベルが亡くなった日です。ノーベルは、爆薬のダイナマイトを開発し、大きな財産を築いたスウェーデンの科学者で、遺言書の中で人類が発展する上で重要な発明や発見をした科学者を毎年表彰する賞を作り、自分の遺産を生かして賞金を与えると記しました。これがノーベル賞です。
この遺言にしたがって、ノーベル賞が1901年に設けられました。自然科学の分野では、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞があります。各賞は、ノーベルの遺産を管理する団体ノーベル財団から授けられます。物理学賞と化学賞はスウェーデン王立科学アカデミー、生理学・医学賞はスウェーデンのカロリンスカ研究所がそれぞれ受賞者を決めます。これらの研究所には、5~6人の科学者からなるノーベル委員会が各賞ごとにあります。
どのように受賞者を決めたかについては、発表から50年経たないとその理由は明かされないルールになっています。現在は1960年代までの記録が公開されています。受賞者は毎年10月に発表されますが、その選考は1年前の9月から始まります。各賞のノーベル委員会は、世界中の科学者や大学に対して、ノーベル賞にふさわしい人物の名前を答えるよう、手紙で依頼します。
依頼の手紙は、物理学賞や化学賞の場合だと200~300人程度に送られます。生理学・医学賞は1,000人近くに送られます。返答の締め切りは年が明けた1月末で、この時点で、候補者は50~100人程度にしぼられます。2月からノーベル委員会の本格的な選考がはじまります。候補者の業績が、本当に最初の発見や発明が人類の発展に役立ったかどうかも重要なポイントになります。
慎重に議論を重ね、ノーベル委員会は9月をめどに受賞者の案を決めます。一度に受章できるのは3人までです。委員会が出した受賞者案は、10月上旬の発表日の朝に各研究所で投票にかけられ、午後には受賞者が全世界に向けて発表されます。物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の3賞をこれまでにもらった人は、600人以上になります。ノーベルは「国籍を問わず賞を与える」と遺言に書いていますが、実際には国籍は偏っています。

(2018年12月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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