ポストコロナ禍の大学運営―Ⅲ

経営難の私立大学の公立化
18歳人口が年々減少する中、定員を満たすだけの学生を確保できず、経営難に苦しむ私立大学が増えています。約3割の大学が定員割れになっており、約4割の大学法人が赤字に陥っています。最近私立大学が、地元自治体が運営する公立大学に移行する事例が増えており、過去10年ほどの間に11の私立大学が、公立化しています。自治体が公立大学を運営する場合、学生数に応じて地方交付税が増額され、自治体はその交付税から大学に運営費交付金を支給します。私立大学の時と比べて補助が大幅に増加するため、それを利用して授業料を引き下げることができます。
学費が安くなるだけでなく、自治体が管轄しているという安心感や、安定して高いレベルの教育を受けられる期待などから、受験生やその親から信頼が厚くなります。そのため、公立化した大学の入試志願倍率の推移を見ると、公立化した年は前年と比較し軒並み高くなっています。
私立大学の公立化は、地域の活性化拠点としての大学活用という国の方針ともあいまって、身を切る努力を見せない大学が多くなっています。学生の卒業後の雇用を地域で確保できるのかなど、公立化の意義と必要性をしっかり議論すべきです。経営難の私立大学が息を吹き返し、地元に若者が集まり、街が活性化するといった特効薬のように見えますが、大学の独自性を打ち出し、魅力を高めていかなければ、地方交付税や市税を投入したあげく、再び経営難に陥る危険性が潜んでいます。

(Wedge August 2020)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。