乳児予防接種率の低下

世界で乳幼児に必要な予防接種の遅れが生じています。新型コロナウイルスの感染拡大後、はしか、ポリオ、3種混合(ジフテリア・破傷風・百日ぜき)ワクチンの1歳児の接種率が、約20年ぶりに低下しました。コロナ対策に医療資源が振り向けられたことや、外出制限に伴う受診控えが背景にあります。
はしかなどの感染症は、予防接種を受ければほぼ確実に感染を防げるため、VPD(ワクチンで防げる病気)と呼ばれます。大多数が接種すれば、集団免疫を獲得し、感染の広がりも抑えられます。低下は途上国で著しくなっています。インドネシアでは、はしかの接種率が2021年に2019年比で16ポイント、タンザニアではポリオが19ポイント下がっています。外出制限などに加え、慢性的な資金不足の中で、医療資源をコロナ対策に振り向けた結果、定期接種に中断や遅れが生じています。
予防接種の後退は先進国でも起きています。日本では2021年度のはしか風疹のワクチンの1回目接種率は93.5%と、前年度を5ポイント下回っています。僅か数ポイントの低下でも、接種推進を国際支援に頼る途上国を中心に、回復には努力と時間を要します。

(2023年1月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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