介護事業者の倒産の増加

介護事業者の倒産や休廃業・解散が、2022年に過去最多を更新しています。新型コロナウイルス感染拡大による利用控えに、物価高が追い打ちをかけています。介護スタッフの不足も深刻で、需要があっても十分なサービスが提供できず撤退する事業者も目立っています。施設などの閉鎖に伴い、行き場を失う介護難民が増えつつあり、国や自治体による支援の強化が急務となっています。
東京商工リサーチによれば、2022年の介護事業者の倒産は、介護保険制度が始まった2000年以降で最多の143件(前年比76.5%増)です。休廃業・解散も2010年の調査開始以降で最多の495件(115.6%増)となり、倒産と合わせると638件に上っています。
介護報酬は公定価格のため、サービス料金の引き上げが難しく、感染防止のための利用控えと物価高による息切れ倒産が目立っています。比較的需要の多い都市部でも、中小の事業者がスタッフを確保できず、休廃業に追い込まれるケースが出ています。訪問介護など在宅サービスの分野では、利用者のたらい回しが始まっています。介護事業者の減少が続けば、地方を中心に介護難民がさらに増える恐れがあります。国や自治体は、地域によってサービスの提供体制に偏りが出ないよう事業者の支援を拡充し、介護職員の待遇改善などを進めるべきです。

 

(2023年3月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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