共同親権の是非

日本の民法では、親権は父母が共同で行使するのが原則です。しかし、離婚した場合は、父母の一方しか親権者になれないとも定めています。米欧諸国では、離婚後も父母の両方が子の親権を持つ共同親権が一般的です。国際結婚が増え、日本人女性が離婚後に海外から無断で子を連れて帰る事例が起き、共同親権の米欧諸国が問題視しています。民法766条は、この利益を優先して監護・面会交流の方法を協議で定めると記しています。親権を持たない親が子と会う面会交流に関しては、その頻度などの具体的な規定が法律には記されていません。父母の話し合いで決めることが前提になります。
父母の協議で決着しなければ、家庭裁判所に調停を申し立てします。家裁が家庭に関する事件を調停する家事調停の統計をみると、2006年度から面会交流に関する調停の申立件数が急増しています。2006年度の約7千件から、2018年は3倍近い約2万件になっています。20歳未満の子を持つ夫婦の離婚件数は同時期に減少傾向だったにもかかわらず増えています。
米国では面会交流を民間の第三者が支援する体制が整っており、フランスでは民法典に面会場を明記しています。片方の親による暴力や虐待を防ぐためのインフラをつくっています。共同親権を導入するか否かとは別に、まず米欧諸国を参考に面会交流の支援策を考えるべきです。

 

(2019年12月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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