冬のかくれ脱水

かくれ脱水とは、体から体重の1~2%相当の水分量が失われた状態を指します。成人の場合、汗以外に皮膚や呼気から体外に出ていく水分量は、1日に体重1㎏あたり15㎖といわれ、体重60㎏の人で1日に900㎖の水分が失われる計算になります。湿度が低く、空気が乾燥している冬は、体の中から水分がより奪われやすくなります。気温の低い冬は、少しの運動や暖房などでも汗をかきやすくなっていますが、自覚しづらい状況にあります。体感温度が低いため、喉の渇きにも気付きにくく、水分補給が不足しがちです。外出先や夜間のトイレを減らそうと、水分摂取を控える人も冬に増えます。これらの要因がかくれ脱水を引き起こします。
皮膚が乾燥する、唾液の量が減って口の中がねばねばする、脚の脛にむくみが出るといった兆候が見られることもあります。かくれ脱水の状態だと、鼻や喉への異物の侵入を防ぐ粘膜の水分量が減るため、インフルエンザやノロウイルスによる胃腸炎など感染症にかかりやすくなります。感染症を発症すれば、高熱や下痢、嘔吐などでさらに水分が失われ、脱水症に陥ることもあります。

予防には、こまめな水分摂取が不可欠です。就寝前や起床後、食事中や食間などにコップ1杯分の水分を取り、1日に1~1.5ℓの水分を取る必要があります。利尿作用があるアルコールを飲んでも、水分摂取にはなりません。かくれ脱水は飲酒時にも起こりやすいとされています。酒量と同量の水分を摂取することが大切です。寒い冬はつい長湯しがちですが、湯温は40度程度、つかる時間は10分以内を目安にすべきです。

(2019年1月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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