加齢黄斑変性に対するiPS細胞診療

加齢黄斑変性の症例に、2014年にiPS細胞から作った細胞移植が実施され、7年が経過しました。腫瘍化などはみられず、手術前の視力が維持できています。患者は、手術当時78歳で、滲出型加齢黄斑変性と診断されていました。目の中で光を感じる視細胞へと栄養を送る網膜色素上皮細胞の下に余分な血管がつくられ、視力が落ちる病気です。
余分な血管を取り除き、患者自身の皮膚の細胞からつくったiPS細胞を、シート状にしたものを、右目に移植しています。術後7年の時点でも、iPS細胞から作った細胞シートは、移植された場所にとどまり、腫瘍化など異常な細胞増殖もみられませんでした。術後、治療薬の注射をしなくても、矯正視力は0.09のまま保たれていました。
移植した細胞差シートが7年以上の間生着して、機能していることが確認できたこと、iPS細胞を使った世界初の症例で、長期間の安全性を実証できたことは意義が大きいと思われます。しかし、視力が改善しているわけではありません。患者としては、術前の視力より改善を期待しています。その意味では、明らかな臨床効果があったとは言えません。

(2023年4月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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