労働生産性の向上のために

国家の経済成長は、人口と生産性で決まります。人口が減り続ける以上、生産性を向上させ、働き手の所得水準を高めなければ、わが国の社会システムは維持できません。労働力は2060年までに3,000万人ほど減ると言われています。膨張する社会保障費は現役世代にのしかかり、負担は倍増します。
公益財団法人日本生産性本部の統計によれば、2019年の日本の1人当たりの労働生産性は、8万1,183ドル(857万円)で、OECD加盟37か国の中で26位、先進7か国では最下位です。1時間当たりの生産性も47.9ドル(5,059円)で、先進7か国で最下位となっています。
日本の生産性が低いのは、先進諸国に比べて企業規模が極端に小さいからです。米国の半分、欧州の3分の2程度の規模です。企業規模は生産性と密接に関わります。規模が大きくなれば生産性は上がります。日本全体の生産性を大きく向上させるには、全企業の99.7%、雇用の7割強を占める中小企業に切り込む必要があります。
中小企業の再編や統廃合を進めるために最も有効な手段が、最低賃金の引き上げです。中小企業の再編による生産性向上の必要性が指摘される一方、コロナ禍に伴う経営環境悪化で、性急に最低賃金を上げれば、多くの中小企業で経営が立ちゆかなくなってしまいます。
中小企業の多くが経営に深刻な打撃を受けた最大の理由は、生産性の向上に手を付けて来なかったことによります。賃金が高くなければ、経営者は人件費を抑えようと経営努力をし、機械化などへの投資にも資金を割くようになります。経営が耐えられなくなれば、自然に統廃合も進みます。企業規模が大きくなることで経営に余裕が生まれ、新たな研究開発や技術革新も進むことになります。

(2021年1月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。