国産ワクチンの開発

新たな感染症のパンデミックを見据え、国産ワクチン開発の司令塔となる組織であるSCARD(スカーダ、先進的研究開発戦略センター)が、日本医療研究開発機構(AMED)内に新設されました。AMEDは、これまでも医療研究に資金を投資してきましたが、スカーダはワクチン研究に特化した組織です。自ら情報収集や分析をし、有望な研究に投資します。
文部科学省とともに世界トップレベル研究開発拠点となる研究機関を選び、ワクチンに関わる基礎研究を支援します。経済産業省とは、ワクチン開発に取り組むベンチャー企業を対象に、初期の臨床試験を支援します。予算は、研究への投資に5年間で約1,500億円です。文部科学省と経済産業省との共同事業は、それぞれ5年間で約500億円がついています。今回のコロナ禍で、日本で開発されたワクチンで承認されたものはありません。背景には、こうした新型コロナ対応での反省があります。
日本では過去にワクチン接種後の副反応が社会問題となり、訴訟が相次いだこともありました。感染症の流行は予想し難く、ワクチンを開発しても投資回収の見通しがつきにくく、企業や研究者が育たず、国内で開発力が高まりませんでした。しかし、海外からの輸入に頼っていては、ワクチンが必要な時に確保できるか分かりません。仮に日本だけで感染症が流行した場合でも、海外企業に開発を頼らざるを得ない状況に陥ります。政府は、ワクチン開発を外交や安全保障の観点からも極めて重要としています。

(2022年4月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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