地方私立大の充足率の低下

日本私立学校振興・共催事業団によれば、2022年度の私大の入学定員に占める入学者の割合を示す充足率は、東京都が103.4%で、前年度に比べ2.6ポイント増えています。都市部での就職環境の改善もあり、少子化の中でも、都心の私大の人気は堅調に推移しています。しかし、地方の充足率は下落傾向にあります。愛知を除く東海地方は92.9%(4.2ポイント減)、広島を除く中国地方は87.3%(0.5ポイント減)です。規模別にみると、入学定員500人未満の大学の充足率が低く、規模の小さい地方私大の苦戦が目立っています。
東京23区内の大学の定員増を認めない規制が、2024年度にもデジタル分野の学部・学科に限って緩和される見通しです。都心で学部新設や拡充が進む可能性がありますが、すでに少子化で学生確保に苦戦する地方大学にとって状況はさらに厳しくなります。地方でも特定分野で強みを打ち出せれば、優秀な学生や研究者の獲得は可能です。地域振興にもつながります。データ系で国内の先駆けとなった滋賀大学データサイエンス学部は、企業と連携した教育研究に力を入れ、入試の志願倍率も比較的高くなっています。
リクルート進学総研の試算によれば、2022年に112万1千人だった18歳人口は、2034年に100万6千人へと1割減ります。大学進学率は近年頭打ちで、授業料収入を柱とする大学の経営環境はさらに厳しくなっています。23区の定員規制緩和によって、地方大学は競争力をどう高めるかが、一層問われることになります。

 

(2023年2月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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