外国人労働者の技能実習制度の変更

現行の外国人労働者の技能実習制度に代わり、人材確保を目的に加えた新制度が検討されることになりました。理念とする国際貢献と、人手不足対策という実態との乖離が大きいためです。制度は1993年に創設されましたが、人手不足が深刻化する中で、事実上労働者確保のための抜け道となっていました。
非熟練者を低賃金で雇える技能実習は、企業にとって大きな利点です。母国の数倍の収入が得られる場合もあり、実習生は、2022年末時点で約32万5千人と10年前の2倍超になっています。外国人労働者の2割近くを占め、日本経済に不可欠の労働力です。
技能実習の拡大にともない、労働者の失踪問題が浮上してきています。入官庁によれば、2021年に失踪した実習生は7,167人で、最多だった2018年の9,052人より減りましたが、高水準が続いています。海外からの批判も大きく、暴力、劣悪な生活環境、賃金差し押さえなどの人権侵害が起きていると指摘されています。失踪の背景には、当初3年間原則転職できない仕組みがあります。
政府の有識者会議は、代替の新制度案を示しています。制度開始からの30年で、国内の生産年齢人口は1千万人以上減少しています。見直しを看板の掛け替えではなく、貴重な外国人材が安心して働ける環境につなげる必要があります。

 

(2023年4月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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