大学の知の生かし方

内閣府の資料によれば、東京大学や京都大学など特許収入の多い上位10大学の合計額は、年平均24億円にとどまっています。ノースウェスタン大学など米国の上位10大学は1,178億円で、日本は49分の1です。特許の取得数は1,320件と、米国の2,347件の半分超あるのに稼ぐ力では大差がついています。

1件の特許を取得するのにかかった研究費は、日本の10億円に対し、米国は12億円弱とほぼ差はありません。特許収入は企業からのライセンス料などが多く、同じコストをかけているのに日本の大学は成果をビジネスにつなげることができていません。国内の大学の特許で、企業に活用されているのは20%に満たない状況です。
知財で稼ぐには、大学内に専門の人材や組織、施設が必要になります。文部科学省によれば、全大学のうち研究者の企業を支援するプログラムがあるのは8%、特許の専門家である弁理士を配置しているものも5%に過ぎません。起業について相談できる専門家が学内におらず、知識不足で大手企業に特許料を安く買いたたかれた研究者もいます。米欧の有力大学では、特許やビジネス戦略の専門人材がそろっており、起業支援の施設も充実しています。

人工知能(AI)や宇宙など先端技術分野のユニコーン企業価値10億ドル以上の未上場企業が米国は534社と、日本の100倍に達しています。大学の知の生かし方にも原因があります。博士課程の研究者に起業のノウハウを教えるなど、日本にも技術とビジネスの双方に精通する人材を増やす必要があります。

(2024年3月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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