失われた30年のツケ

円安に歯止めがかからず、円は20日に節目となる1ドル=150円台まで下落しました。日米の金利差を埋めるには、日本銀行が金利を引き上げるのが効果的です。しかし、利上げによって住宅ローンの金利が上ったり、企業の資金繰りが厳しくなったりする恐れがあります。金利差が縮まらない以上、短期的に円安に歯止めをかけるのは、ドル売り円買いの為替介入に限られてしまいます。
手詰まりな状態なのは、日本経済が失われた30年とも呼ばれる低成長から抜け出せなかったことが背景にあります。日本はバブル景気がはじけて以降、長期の停滞期に入りました。円高によって輸出産業を中心に競争力が弱まり、国内消費が冷え込み物価が下がり続けるデフレに陥りました。
これを打開しようと、第2次安倍政権の経済対策であるアベノミクスが始まりました。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を3本の矢と呼び、賃金上昇による消費の拡大と物価の上昇という好循環を目指しました。異次元の金融緩和で、低迷していた株価は上昇、一定の効果は出たものの、成長力の底上げには結びつきませんでした。
世界を席巻するようなイノベーションが起きず、生産性が上らない中、円安を助長する金融緩和をやめられなくなっています。大量のお金が市場に供給されたことで、本来、市場から退場すべき企業が生き残り、新陳代謝を妨げているという弊害も指摘されています。1ドル=150円を招いたのは、こうした失われた30年のツケとも言えます。

 

(2022年10月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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