子宮頸がんワクチン投与の向上

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンの効果の高さが、最近の研究で分かってきています。HPVは性交渉などを通じて感染します。国内では年約1万人の女性が子宮頸がんの診断を受け約3,000人が死亡します。HPVへの感染から子宮頸がんの発症までは数年~数十年かかります。各国は、感染予防などの効果を確認した2000年代後半ごろからワクチンの接種を始めています。2020年にスウェーデンの研究チームが、10~16歳への接種でがん発症リスクが約9割減ると発表して以降、がん予防の高い効果の報告が相次いでいます。
英エディンバラ大学などの研究チームは、1月に13歳以下で接種を受けると14歳以上で受けるよりもがんの発症予防効果が高いとする成果を発表しています。12~13歳で接種を受けた約3万人には、接種回数に関係なく子宮頸がんの発症者がいませんでした。14~22歳で3回接種を受けたグループでは、10万人あたり3.2人の発症者がいましたが、非接種者の同8.4人よりも低率です。性交渉などが増える前の段階で接種すると、より効果が高くなっています。
日本では、一時HPVワクチンの接種で痛みが続くといった訴えが相次いできましたが、その後の研究では因果関係はないことが分かっています。しかし、一般的に接種による痛みがあった場合、不安や恐怖を煽る情報に触れると痛みをより強く感じてしまうことがあります。この悪循環を避けるため、接種者の不安を和らげることや、痛みがあっても体の組織に異常がなければ、運動を勧めるのが大切です。感染による不利益を減らすには、接種率の向上が必須です。

(2024年3月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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