学童保育の充実のために

放課後の学童の居場所に関する国の政策は、4月に厚生労働省からこども家庭庁に移管された学童保育と、文部科学省が所管する放課後子供教室の2つが並行しています。学童保育は、共働き家庭の子どもなどに家庭に代わる居場所を提供する福祉の一環です。一方、子供教室は、地域の人々が中心となって子どもが参加できる体験活動や学びの場をつくるのが主眼で、2000年代に始まりました。
政府は2つの場の一体運営を後押ししていますが、縦割り行政の壁もあってなかなか進みません。2022年で全国に2万6千カ所余りある学童保育のうち、同じ小学校内で一体運営しているのは5,869カ所にとどまり、政府の目標の1万カ所以上を大きく下回っています。整備は進んでいますが、2022年でなお1万5,180人の待機児童がいます。子どもが小学校に上がると預け先がなくなり、保護者が就労を断念する小1の壁と呼ばれる問題が深刻化しています。
学童保育の量的整備は急務ですが、質も重要です。小学生が、行きたい、自分らしくあれると思える居場所をつくり選べるようにする必要があります。放課後と長期休みを合わせると、学校にいる時間以上に長く、それを教育・成長の場と捉えることが大切です。放課後の活動は自己決定やコミュニケーションの力を伸ばし、学力面以外の長所を発揮することで自己肯定感を高められます。子どものウェルビーイングの実現に貢献できます。
放課後活動の場の充実は、教育格差の縮小にも寄与します。学力や進路を巡る子どもたちの格差は、通塾や習い事の有無など、放課後や休日の過ごし方の違いから生じています。保護者の就労状況で、放課後の場を分けるのは、子どもの願いに反します。放課後格差の解消を実効性ある形で進めのが、子ども中心の施策推進をうたうこども家庭庁の重要課題でもあります。

(2023年4月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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