GIは、米スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が2005年に提唱した概念です。男性中心だった科学領域にジェンダーの視点を取り込むよう早くから訴えてきています。こうしたGIは欧米で発展してきましたが、日本でも最近ようやく動きが出てきています。GIに世界が注目する背景には、命にかかわる現状が次第に明らかになってきたことが大きく影響しています。
医学分野は特に重要です。薬の代謝作用、効能は男女で異なる場合があるのに、ほとんど男女で同じ処方になっています。これは女性が妊娠や出産の可能性、性周期があるためにデータがぶれやすく、臨床試験などが主に男性で実施されてきたことが大きく作用しています。
国内では最近、生理や妊娠、更年期など女性の悩みをテクノロジーで解決するフェムテックや、女性の身体や健康をケアするフェムケアの市場規模が急拡大中です。一方、GIは対象を女性に絞らず、ヘルスケアを含む医療や工学など幅広い産業で必要とされる点で、より包括的とされています。個人が毎日の生活の中でGIを意識することが大切です。
（2023年4月22日 朝日新聞）
（吉村 やすのり）
