日本人の身長と体重の変化

文部科学省の学校保健統計調査によれば、17歳の平均身長は1994年度に男性170.9㎝、女性158.1㎝を記録して以降、2021年度まで30年近く横ばいが続いています。



歴史的にみると、江戸時代の男性は平均157.1㎝なのに対し、縄文人は159.1㎝と2㎝高いとされています。縄文人に続く弥生人は、161.4㎝とさらに高くなります。稲作の普及で栄養状態が良くなったこと、この時代に朝鮮半島や中国から渡来した人々に背の高い人が多かったことが背景にあります。明治以前で最も身長が高かったのは、弥生に続く古墳時代で163㎝とされています。鎌倉時代から江戸にかけては低くなります。仏教の影響で肉食を避けるようになったとの見方がありますが、急速な都市化と人口増が原因と考えられています。
近代化で生産性が飛躍的に高まる明治以降、日本人の身長は再び伸び始めます。過去100年間で、日本は男性が14.6㎝、女性は16㎝高くなり、いずれも世界で五指に入っています。国の経済環境が、子ども時代の栄養状態に影響し、身長も左右する可能性があります。
欧州などある程度成長した後に経済が安定した国は、横ばいになっています。日本人の17歳平均が伸びない背景には、子どもの屋外での運動不足や睡眠不足などがあるとの意見があります。成人平均身長は既に低下し始めたとする意見があります。1969~2014年に生まれた子どもの出生時の状態と成人身長の推移を調査・予測したところ、1980年以降に生まれた成人の平均身長は低下しています。2,500g未満の低出生体重児が増えたことが影響していると思われます。
妊娠中の体重制限が、母親や子どもに良いとする風潮や医師の指導が、低出生体重児の増加に影響した可能性は否定できません。低出生体重児が増えたことで、2014年生まれの人は1980年生まれに比べ、成人時に男性で1.5㎝、女性は0.6㎝低くなると予測されています。

 

(2022年11月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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