最低賃金の地方底上げ

最低賃金は、企業が従業員に支払うべき最低の賃金額で、都道府県別に時給当たりで示されます。パートタイムや嘱託など雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されます。最低賃金法が、最低賃金以上の賃金を支払わなければならないと定めており、労使が最低賃金より低い金額で合意しても無効です。
日本全体の賃金引き上げに向け、最低賃金の重要性が高まっています。安倍政権下だった2016年度から、新型コロナウイルス感染拡大の影響が強かった2020年度を除いて、毎年3%超の上げ幅が続いています。一方で人手不足が深刻になる地方と首都圏などとの最低賃金の格差は課題となっており、厚生労働省はランク制度の見直しを進めていました。
現行の目安額は、各都道府県をA〜Dの4つのランクに分けて示しています。東京都や大阪府などがA、沖縄県や高知県などがDです。厚生労働省は、これを3つに減らすとしています。区分を減らして地域間の格差を是正し、日本全体の賃金底上げにつなげるとしています。
最低賃金が、日本全体の賃金に与える影響は大きく、最低賃金の改定後に賃上げが必要になる労働者の比率をみると、2021年度は16.2%と2012年度から11ポイント超上がっています。北海道や東北、九州地方などが目立っています。雇用形態別では、最低賃金の水準近くで働く非正規やパートタイムの賃上げにつながりやすくなっています。
一方で最低賃金の引き上げは人件費の増加につながり、中小企業の経営を圧迫します。中小企業の賃上げのためには、価格転嫁や公正な取引が重要となります。賃上げの実現には、収益を上げやすくするための生産性向上も欠かせません。

 

(2023年4月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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