民間企業での障害者雇用率の引き上げ

障害者の雇用率は、障害者雇用促進法に基づいて企業や国などに義務付けられるもので、法定雇用率と呼ばれています。民間企業で働く障害者は、2022年6月時点で過去最高の約61万4,000人で、実雇用率も2.25%に改善しています。しかし、法定雇用率を達成している企業は48.3%にとどまっています。
民間企業に義務付けられる障害者雇用率が、現在の2.3%から段階的に引き上げられ、2026年7月から2.7%となります。新たな法定雇用率の達成の行方を左右するのが、精神障害者の雇用です。20118年度に精神障害者の雇用義務が追加されました。短時間労働者の雇用率の算定にあたって特例で優遇措置を講じたことにより、2022年は11万人と2012年の1.7万人の6倍以上に増えています。
働く精神障害者が増えている一方、定着率の低さが課題になっています。障害者職業総合センターの調査によれば、精神障害者の人の1年後の定着率は49.3%で、身体障害者の60.8%や知的障害の68%よりも低率です。状態に波がある人がいるほか、働く側の意欲と仕事のミスマッチも一因とみられています。将来のキャリアアップなどが見通せないことでやりがいが感じられず、短期の離職につながっています。
企業が法定雇用率の大幅な引き上げに対応するには、障害がある従業員をサポートする専門人材の育成やノウハウの蓄積に取り組む必要があります。特定の業務を機械的に割り当てるという考え方ではなく、能力や意欲に応じた仕事の割り振りを行い、戦力として生かす努力も大切です。

(2023年2月8日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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