iPS細胞による心不全治療

慶應大学発の新興企業であるハートシードは、重い心不全患者の治療で、人のiPS細胞から作製した心臓の筋肉(心筋)の細胞を小さな塊(心筋球)にして心臓に移植する世界初の治験を行いました。現時点で合併症はなく、心臓の状態にも改善がみられています。移植した細胞が成長して心筋が再生すれば、心臓移植に代わる根本的な治療法につながる可能性があります。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、血液をうまく送り出せなくなる状態です。国内の患者数は約120万人に上り、年間9万人近くが亡くなっています。
今回の治験の対象は、心筋に血液が行き渡らなくなる虚血性心疾患を起こした20~80歳の重い心不全患者10人です。心筋細胞は再生しないため、根本的な治療は心臓移植しかありません。移植した細胞が心臓の一部として一体化し、拍動することで心機能の改善を図ります。
他人のiPS細胞から変化させた心筋細胞5,000万個から心筋球を約5万個作製し、特殊な注射器で心臓に直接注入しました。約1か月後に検査をしたところ、ポンプ機能の低下で緩んだ心臓の状態に改善がみられています。今後、約1年かけて細胞の成長や移植による効果を確かめます。

(2023年2月11日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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