生涯現役社会を目指して

安倍内閣は、今後1年かけて生涯現役時代に向けた雇用改革を実施するとしています。高齢者にも働きやすい環境を整えたうえで、社会保障制度の抜本的改革に乗り出すという2段階で取り組む考えを示しています。雇用改革では、65歳以上への継続雇用年齢の引き上げを検討します。高齢者を採用する企業への支援策などを検討し、民間での高齢者雇用の拡大の取り組みを後押しします。同時に中途採用の大幅拡大にも取り組みます。
生涯現役時代を前提とした社会保障改革では、年金制度に関し、70歳を超えても受給開始年齢を選択できるようにします。健康な高齢者を増やして医療保険など財政負担の削減につなげるため、予防・健康へのインセンティブ措置も強化します。働き方改革と社会保障制度改革を連動させることにより、投入される労働力が増えれば成長にも資することになり、税収も入るし、社会保険料にもプラスになります。特に予防医療の充実に重点を置き、健康寿命を延ばすことが大切になります。
15~64歳の生産年齢人口は全体の6割を割り、20年後には55%前後まで落ち込んでしまいます。経済成長のためにも高齢者の就労促進は欠かせません。働く高齢者は保険料を負担し、社会保障をする側にまわります。しかし、高齢化のスピードは想像以上に速くなっています。日本では、1人あたりの医療費が高い75歳以上の人口が65~74歳を逆転し、医療費が社会保障に与える影響が大きくなっています。
来年10月に予定する消費税率10%への引き上げには、必ずやり遂げなければなりません。増税による消費や景気への悪影響が一時的にみられますが、今後の高齢化の進展を考えれば、10%への引き上げだけでは歳入の改革は十分ではありません。高所得の高齢者の自己負担を増やしたり、医療費の伸びを経済成長の範囲に抑えたりといった抜本的な給付面での改革も必要になります。

(2018年9月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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